ワイン業界、見逃せないあれこれ。
酒類ドットコム ワイン部が総力を挙げて執筆するこの「Now Update」は、ワインにまつわる旬な情報、ワインの知識や、憧れのワインやワイナリーのエピソードをご紹介いたします。
ワイン二大銘醸地 ボルドーとブルゴーニュ
ワイン王国・フランスにおける、二大銘醸地・ボルドーとブルゴーニュ。
ボルドーは中世の一時期をイギリス領となったことから、早くから海外に輸出され、
シャトーという醸造所を中心として、ブランド力を高めた産地。
ブルゴーニュは古代ローマ時代からブドウ栽培が行われている歴史ある産地で、
12世紀にはその名声を確立していました。
ワインの歴史においても、市場においても外せない地域ですが、どういう違いがあるのでしょうか?
ブルゴーニュ2020、止まらぬ勢い
高級ワイン市場でのブルゴーニュワインの比重
Liv-ex(ライブ・エックス)によると、これまで高級ワイン市場をリードしてきたボルドーワインは全体の中でその比率を徐々に下げていき、代わりに多様なワインが取引されるようになったという傾向に。
そしてLiv-exの取引の中で、価格の面ではブルゴーニュがボルドーを上回る結果となっています。
2022年に入ってからは、ボルドーの25.7%に対して、ブルゴーニュが28.8%を占め、金額ベースで最も取引されている地域となっています。(グラフ1)
ブルゴーニュワインへの各国の熱量
2021年、ブルゴーニュの二次市場は繁栄し、(Liv-exでの)取引量は過去最高を記録、市場全体に占めるシェアも過去最高となりました。
価格の上昇幅と比例するように、「優良ラベルは今後も大きな注目を集め、この傾向が続くだろう」とLiv-exのマックス・ウェル氏は述べています。
また、特に高級ワインの取引が活発なイギリスにおいては、ブルゴーニュワインが「最も取引された高級ワイン産地」としての地位を確立し、取引全体の31.5%を占めました。
2021年にはブルゴーニュの国際的な知名度も高まり、アジアからの関心も高くなっています。
一方、より大きな影響を与えたのは昨年6月に正式にアメリカの貿易関税が撤廃され、アメリカのバイヤーがより多くのクラシカルなヨーロッパワインを求めて熱心に購入したことでした。
アメリカの購入額のシェアは、2020年の15.1%から、25.5%に大きく上昇しています。(グラフ2)
2020年ヴィンテージのゆくえ
ブルゴーニュ2020年は、高品質なヴィンテージと評価されています。
夏が暖かく、記録的と言えるほどブドウが早く収穫された2020年は、夏の干ばつによりピノ・ノワールに糖分と酸が集中したために、アルコール度数が高く、酸味が強くなったという印象です。
気候条件、テロワールを見極め、適切な収穫日を選ぶことができたかがそのワインの品質を決定づけたようです。
また収穫量は、2019年に続き2020年も少なく、その後の2021年はさらに少なくなりました。こうした供給不足の中で、すでに一定の評価を受けている高級ワインの価格の上昇幅は大きく、低価格のワインの上昇幅は小さくなっています。
これは品質の差でもありますが、次のヴィンテージが控えていることも理由のひとつとされています。
様々なブルゴーニュワインを求める旅へ
非常に人気が高まり、価格の上昇は青天井ともされるブルゴーニュワインですが、先述の通り供給面には大きな不安が残ります。
プルミエ・クリュやグラン・クリュなど一番上の層は、価格は高くなりますが、買い手は少なくなります。
その中に、新たな生産者や多様なワインが参入してくると、コレクターたちは様々なワインを求め、市場は活発化します。
ブルゴーニュ全体の取引が増えたために、これまであまり評価されていなかったワインの品質にも注目が集まっています。
また、高級ワイン市場で取引されるワインはそのほとんどが赤ワインですが、Bourgogne Wine Boardによると、ブルゴーニュは白ワインが主流の地域であり、白品種が栽培面積の57%、生産量の約60%を占めているとのこと。
「ブルゴーニュ」にこだわるコレクターが増えれば、その品質や手に入れやすさにより白ワインの取引が拡大する可能性もあります。
今後多様なブルゴーニュワインの魅力が発掘され続ければ、ブルゴーニュワイン市場はより一層の盛り上がりを見せることでしょう。
【参考・出典】
Liv-ex,"Burgundy 2020: Stocks and sweet spots"https://www.liv-ex.com/2022/01/burgundy-2020-stocks-sweet-spots/(2022-01-27)
Liv-ex,"White Burgundy’s secondary market potential "https://www.liv-ex.com/2022/01/white-burgundys-secondary-market-potential/(2022-01-27)